神戸から
楽しい防災を広める。

永田宏和
NPO法人プラス・アーツ理事長/
KIITO副センター長

永田宏和さん

防災を広めることが、
自分の使命。

阪神大震災が発生した1995年、永田さんは大阪にある建設会社の設計部で働いていた。震災直後に車で姉家族が住む神戸に向かった。しかし、震災直後、神戸へ向かうことは容易ではなかった。高速道路の倒壊の影響で道路は大渋滞。やむなく断念した。目途が立ったのは、震災から2日後。親戚に燃費のいいバイクを借りることができ、再び神戸へ向かった。故郷の状況が気がかりだった永田さんは、神戸に向かう途中で西宮の香櫨園あたりの様子も見に行くことに。そこで見た光景は、今でも忘れることができない。まさに壊滅状態だったのだ。バイクを走らせながら溢れ出てくる涙。「カメラを持っていたにもかかわらず、一枚もシャッターを切ることができませんでした。」と永田さんは当時を振り返る。悲惨な状況を目の当たりにし、神戸や西宮を再建する事業に携わりたいと会社へ志願した。しかし、永田さんが携わっていた京都のショッピングモールはオープン直前。願いは叶わなかった。仕事が忙しく、被災地へのボランティアにもなかなか参加できない。街づくりをしている人間として、故郷が大変な時に何もできない状況に悔しい思いをした。それから10年後。会社から独立して企画プロデュース会社を営んでいた永田さんは、子ども向けイベントの開催にも複数携わっていた。そんな永田さんへ、神戸市から「震災復興事業で子ども向けのイベントを企画してほしい」と声が掛かる。「自分の番が来た。」と感じた永田さんは快諾。本気でやらなければ失礼になると思い、引き受けていたいくつかの仕事を整理して、被災者へ徹底的にヒアリング調査をする事から始めた。

正しいことより、
楽しいことを。

10年という月日が流れた神戸が未来を向くためには、鎮魂だけでなく、震災から学んだことを受け継いでいく「教育」が大切だと考えた。そこで、以前から子ども向けに行われ人気になっていたおもちゃの交換会に、被災者の声から作りだした防災教育のプログラムを組み合わせたイベントを開催することに。防災訓練を楽しく学ぶ「イザ!カエルキャラバン!」が、この時に誕生した。2005年から神戸市内の小学校や駅前広場、区役所のある建物の共用スペースなどでプログラムを実施。しかし、初めは永田さんたちの活動を批判する声も多かった。「防災は遊びじゃない。」という人たちがたくさんいたのだ。それでも永田さんは、活動を辞めようとはしなかった。楽しくなければ人は集まらない。集まらなければ、防災の知識や技も伝えられないという信念があったからだ。そして、イベントを実施すれば、活動の意義を体感してもらえるという確信もあった。実際、批判的だった人もイベントを終える頃には、「今までの防災活動で、これほど子どもたちが集まり真剣に学んでくれることはなかった。」「こういうやり方もあるのですね。」と永田さんたちの活動を肯定。徐々に風向きは変わり、今では永田さんたちの元には絶え間なくイベントの依頼が来るようになった。

大切な人との時間を、
守りつづけるために。

防災活動を続けているとメディアに取り上げられる機会も増え、反響も大きくなっていった。その時に、「これは神戸だけの問題ではない。日本における大きな社会課題だ。」ということに気づく。全国にこのイベントを波及させる必要があり、全国に広げるためには社会的なミッションを掲げた組織にする必要がある。そう思い、2006年「NPO法人プラス・アーツ」を設立した。永田さんの思いを乗せた活動は日本全国に広がって行き、現在は36都道府県の町内会、PTA、小学校、自治体、企業、などでイベントを開催している。今、日本では地震だけでなく台風や大雨などの風水害を含めた防災への意識が高まっているのだ。神戸においても、南海トラフ巨大地震がいつ発生してもおかしくはない状況。危機感は必要だ。神戸ルミナリエは震災を思い出してもらったり、経験してない人にとっては知ってもらったりするきっかけとなるイベント。イルミネーションを楽しみながら頭の片隅にでも防災への意識を植え付けてもらいたい。神戸ルミナリエを一緒に見ている大切な人たちと、いつまでも幸せに暮らすために。

神戸ルミナリエを安全に
継続開催できるよう支援!